我が家は来年度に長男が小学校への入学を控える身。
小学校に入学するにあたって、どうしても気になるのが、PTA問題です。
PTAというと、どうしても「同調圧力がすごい」「無駄な作業ばかり」「平日休まなければならない」など、ネガティブなイメージが先行してしまいます。
しかし、本書を通じて、そういった負のイメージが解消されていく感覚を覚えました。本来ちゃんとPTAとしての機能が生かされれば、わりと良い組織なのだな、と思わされます。問題は、どうやってそれを実現してくか、というところですが……。
問題だらけのPTA
本書は、政治学者である著者ことオカケンが、ひょんなことからPTA会長に抜擢されるところから始まります。
そこからが地獄の始まりでした。
内定者スピーチの場で巻き起こる役員同士の罵り合い、引き継ぎに5時間かかる、99%優先度Aの引継書、議題・報告事項・その他が渾然一体となったカオスな役員会議、スリム化に対する不安という名の抵抗、改革を阻むポイント制……。
これらの理不尽に対して最初は正論に告ぐ正論で打破しようとするオカケンですが、まったく歯車が噛み合わず、空回ってばかり。
しかし、運動会にやってくる町内関係者へのお茶出しを廃止したところから、風向きが変わってきます。
誰もがやりたくないと思っているイベントを減らしていき、自分たちで考えてスリム化できるところをスリム化しようとするオカケンの姿勢は、徐々に受け入れられるようになっていくのでした。
無駄ばかりではないPTA
このあたりから、PTAの活動は、すべてが無駄ばかりではないことにも気づいていきます。
たとえば、ポイント制。PTA活動を何かしらやるたびにポイントが貯まっていき、12ポイントを目安として各々活動することが推奨されているものです。
これがあるから、何か無駄なイベントを削減しようとすると、「ポイントが割り振られている人がいるので、この役割はなくなりました、ということにはできない」と抵抗勢力が生まれてしまうのです。
オカケンも、最初はポイント制を諸悪の根源と捉えてなんとかなくそうと頑張っていました。
しかし、ポイント制はすべてにおいて悪いわけではないことにも徐々に気づいていきます。
ポイント制があるおかげで、何かPTA活動をやってみようと最初のきっかけのインセンティブになっているし、貯めたポイントを見て「頑張ったなあ、自分」と思うママだっている。無碍にすべてをなくすのではなく、ポイント制を正しい形で運用することが望ましい姿だったのです。
また、悪名高いベルマーク集めも、当初はなくすつもりだったのですが、最終的にそうはしませんでした。ベルマーク作業の日は、ママたちが作業しながらダンナの軽口やグチを共有し合うガス抜きの場として、楽しみにしているママたちが多かったのです。
大切なのは、打破ではなく昇華
もう一つ、PTA役員たちがとても止めたいと思っていたイベントがありました。「お月見会」という、地域の名士をPTAの主婦たちが歓待するというものです(かなりひどいですね笑)。
これは相手がお偉いさんなので、校長先生も露骨に辞めたくない雰囲気を出してくる。
これは最終的にオカケンの手腕により、地域の防災訓練懇談会と合同で行うことにして、お月見会をなくすことに成功します。地域の名士はPTAとも関係をもてるし、お酌もすることもなくして、全員がハッピーな昇華の仕方をすることができました。
そのほかにも、PTAの雰囲気をよくするために、飲み会を開いてわだかまりを解いたりして(これもいろいろな事情があるママパパが参加できるよう、たくさんの工夫を凝らされたものでした)、どんどんとPTAに協力的な人を増やしていきます。このあたりには、オカケンの高いマネジメント力やリーダーシップがいかんなく発揮されたエピソードのように感じます。
PTAがなぜそれをやっているか、理由がある
自分が本書を読んで受け取ったのは、なぜPTAがそういった組織になっているか、必ず理由があって、現場は現場の論理で動いているということでした。
ポイント制には人を動かす力があるし、無駄なイベントには「前年度から引き継いだものはしっかりと遂行したい」という気持ちがある。
それらは必ずしも否定するものではなく、むしろしっかりやろうとする善意を軸にして、そうなっている……これに気づいたことは、目の開かされる思いでした。
だからこそ、これらの善意の気持ちを正しい方向に向け、やるべきことをやるためには、非常に類稀なるマネジメント能力とリーダーシップが必要な印象は受けます。
本書の最後の章に書かれた、コロナ禍の1年生親子のために行った、PTAによるケアは感動すら覚えました。
PTA本来の役割を実行するためにはどうしたら良いのか、自分も当事者になったときには、PTAを忌避せず、何かできることはないか考えてみようと思わされました。本当に、良い本でした。おすすめです。
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