キャッチャー・イン・ザ・ライ感想 主人公の感性に共感できるかどうかがカギ

フリーランスになったのを機に、これまで読みたいと思っていても時間がなくて読めなかった名作小説を読み進めはじめました。

まず手にとったのは、名作小説として名高い『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。村上春樹訳バージョンですね。

これがなかなか感慨深い作品だったので、感想を書いていきたいと思います。

キャッチャー・イン・ザ・ライとは

『キャッチャー・イン・ザ・ライ』は、1951年にJ・D・サリンジャーによって書かれた長編小説です。

内容は、高校を放校になった17歳の主人公が、ニューヨークの街を彷徨い、そこで様々な人で出会い世の中を憂いていくストーリー。口語的なスラング多めのモノローグで書かれ、その文体も特徴のあるものになっています。

当時のアメリカの青春小説として多くの人々の共感を呼び、一大ベストセラーとなりました。

ただ、その文体故にアメリカの教育委員会から問題視され、図書館や学校から追放されたこともあるようです。

日本では、訳本が何回か発売され、やはり青春小説としての人気作となっていますね。

ちなみに、村上春樹版の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の前に、『ライ麦畑でつかまえて』という有名なタイトルで野崎孝訳版もあります。

自分は最初野崎版を読んだのですが、いかんせんちょっと言い回しが古く感じて途中で読むのがキツくなり、村上春基版にシフトしました。村上春樹版の方が断然読みやすいので、読む際はこちらをおすすめします。

キャッチャー・イン・ザ・ライ あらすじ

語り手のホールデン・コールフィールドは、成績不良によりペンシー校を放校になる。学校を出る前に、寮友のストラドレイターやアックリーたちと話をするが、喧嘩になり夜のうちに衝動的に寮を出てしまう。

ニューヨークについたホールデンは、ホテルのロビーで女の子とダンスをしたり、ナイトクラブでピアノを聴きにいったりするが、どんどん気分が滅入ってしまう。ホテルに戻ってサニーという名の娼婦を買ってみるものの、何もする気にならなかったうえに、斡旋した男モーリスに殴られ5ドルを余計にとられたりと散々な目に遭う。

翌日、美人の女友達のサリーとデートの約束をして遊びに行くが、気分が滅入った際に口走った罵り言葉が元で、サリーと喧嘩別れをしてしまう。

その後家に帰って妹のフィービーに会い、帰ってきた両親から逃れるために信頼のあるアントリーニ先生の家へ向かう。しかし、寝ているところをアントリー二先生に頭をなでられたことに身の危険を感じ、駅で一夜を明かす。

その後フィービーに家出をすることを手紙で伝えるが、フィービーは荷物をもってきて自分も付いていくと言い、ホールデンはそれはダメだと諭す。

そのまま動物園に入り、回転木馬に乗るフィービーを観て、ホールデンはなんとも言えない幸福感を得る。

キャッチャー・イン・ザ・ライ 感想

あらすじを書いてはみたものの、かなり意味の分からない筋書きにはなってしまいますね。ただ、この小説は筋を追うことに意味はそんなにありません。

それというのも、行く先々で出会う人々に対して、ホールデンが抱く言いようのない嫌悪感や不満、義憤にどれだけ共感できるか、というのが、本書を読み進めるうえで重要な視点になっているからです。

学校の先生の小言に対して抱く嫌悪感、夜の街で出会うインチキめいた大人に抱くやるせなさ、同世代の友達のふるまい一つ一つにいらだちつ感情……作品の中でもうまく言葉になっていないこの負の感情が、スラング多めのモノローグ文体と相まって、多くの共感を呼ぶことにつながっているのだと感じました。

対称的に、幼くして死んでしまった弟アリーや、妹のフィービーなど、無垢性のある対象には肯定的な感情をホールデンは抱いており、大人たちへの義憤が殊更ハイライトされる形になっています。

また、ホールデンは『崖の近くのライ麦畑で遊ぶ子どもたちを、崖に落ちないように捕まえる人になりたい』とフィービーに話し(このあたりがキャッチャー・イン・ザ・ライのタイトルの由来)、子どもを救う人になりたいと語ります。

しかし、明言はないものの「誰かに救われたいのはホールデン自身なんじゃないかな」という気持ちにはさせられます。野崎訳のタイトル『ライ麦畑でつかまえて』は、誤訳だという話も多くあるようですが、自分はホールデンの心情をよく読み取った良いタイトルだなと思いますね。

とにかく、本作のキモは主人公への共感がすべて。この雰囲気に入り込めたかどうかでいうと…自分はあまり入り込めませんでしたね笑。もう30後半のおっさんですし……。

多感な10代のころに読んでいたら、もしかしたら入り込めていたかもしれません。やはりそれなりに若い頃はうまくいかないことが多かったですからね。

ただ、全体にやるせなさが漂う小説の雰囲気は嫌いじゃないです。ある種中二病っぽい感じもある、映画で言ったら『リリィ・シュシュのすべて』とか、日本の小説で言ったら『人間失格』とか、若いな〜という感じは全然好きですね。いや、多分やっぱり10代のころに読んでいたらドハマリした可能性はあります笑。岩井俊二や太宰治は中二のころに触れてかなり病にかかったので笑。

やっぱり、もっと若いころに読みたかったな、と思わせる作品ですね。中二っぽい10代の方に、ぜひおすすめしたい作品です(わりと真面目に)。

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