【人類最後の日】小説『渚にて』感想

SF小説のおすすめを探していたところ、少し気になる小説を発見しました。

その名も、『渚にて』。どうやらもう助からない人類の最後を描いた作品だということです。

人類が滅亡する系の作品はあまり読んだことがなかったので、手にとって読んでみました。以下感想です。

『渚にて』とは

1957年に、元軍人のイギリス人小説家ネヴィル・シュートによって書かれた作品です。

かなりの人気作だったようで、出版から2年後にはスタンリー・クレイマーという監督に映画化され、監督は英国アカデミー賞の監督賞をとったそうです。

2000年に入ってからも『エンド・オブ・ザ・ワールド』というタイトルで映像化されているようで、長く親しまれている作品であることが窺えます。

『渚にて』あらすじ

舞台は1964年。第三次世界大戦が勃発し、核兵器を打ち合った結果、北半球の国々はすべて滅んでしまっていました。かろうじて生き残っていたオーストラリアにも放射能の魔の手が忍び寄ってきており、余談を許さない状況。軍人のホームズと中佐タワーズは原子力潜水艦を用いてアメリカなどの他の国々に生存者がいないか探りにいきます。しかし、無駄骨に終わり、オーストラリアも数日のうちに放射能に飲み込まれることに。最後は生き残ったほかの人々とともに、最後の人生を静かに味わうこととなります。

『渚にて』感想

寂寥感のある読後感が心地良い

この小説の一番良いところは、とにかく寂しげな雰囲気が全体を支配しているところです。

世紀末で物資が少なくなった中、それでも幸せを見つけて生きていこうとしていく人々や、ラストに向かうにつれてそれもすべて終わっていく様は、読んでいてどうしても胸が苦しくなっていきました。

終末だからといって人々が暴徒になるわけでもなく、ただただ楽しみを追求していく姿には、イギリスらしい美しいファンタジー要素も感じましたね。アメリカの作品だったら、きっと暴徒化していると思います笑。

ただひたすらに優しく儚く朽ちていく…そんな人類の描き方は今読んでも新鮮で、読み終わったあとの虚しくも味わい深い感覚は得難いものがありました。

一人で物思いに耽りたい方には、ぜひおすすめしたい小説です。

淡々とした語り口で、前半はやや退屈

反対に、一大スペクタクルみたいな活劇を期待する方には、おすすめしないですね。

物語は非常にスローペースで、淡々と人々の生活の描写から進んでいき、最後までテンポ感は変わらずに進んでいきます。

物語中盤の、自分の子どもを殺す覚悟を奥さんに説くシーンがあるのですが、そこから物語全体が少し影を帯びてきて、ようやく不穏な動きが出てきます。

逆にいうとそこまでのストーリーは非常に牧歌的かつのんびりしたもので、ワクワクドキドキみたいなものを求めると、肩透かしを食うと思います。

SFというほどSF要素もないですし、1950年代の古典小説を楽しむ、というスタンスで読み進めるとちょうど良いかなと感じました。

とはいえ、何代にもわたって語り継がれる名作であることは間違いありません。ぜひ一度は手にとって読んでみても、損はないと思います。

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